かが だいにち川 |
釣りクラブのメンバーの兄貴に大物釣り自慢の一人がいた。郡上郡外の川は殆どなめつくし、道順やポイント情報がびっくりするほど豊富な釣り師で、ルアーから本流の餌釣りまで大物にこだわっていた。弟が釣り用の三菱のワゴンを買う前、兄貴のマツダワゴン(確か・・)で兄弟一緒の釣行に参加することが出来、初めて加賀の川へ入ったのがここ。 他にも参加者がおり、1台のクルマで夜明けを待つには寝るスペースもなかったがクーラーボックスを外に出したりして無理やり街道沿いの川っぷちで仮眠した。目が醒めて川を見ると川原の代わりにヨモギの生えた土手と岩盤が向後に薄ら汚れた水に洗われている。「こんなとこの魚を釣るンかヨー、アマゴなんかおるんかぁ?」とぼやきながら餌を投げ込むと一投目からアマゴの魚信がある。これはこれはとタモを出すと20cm級の黒っぽいアマゴが飛び込んできた。釣れてしまえばあちこちで笑顔が見られるが、一通り釣ってアタリが遠のくと、もうちっと綺麗なトコは無いのかと文句を言い始めた。 そんじゃあ上流のダムからウエへ行って見ようかと案内され、ダム湖を越えて水が澄んだ場所まで移動。渓流の様子は申し分なく、ただ少し川幅が狭いので渓流竿を一段畳んで暫く振ってみた。皆数匹から十匹くらいを追加したところで納竿とし、ポケットナイフを取り出して腹ワタを抜き始めた。帰りもまたクルマで時間がかかりサカナが傷むといけないので、習ってオレもとナイフを当てた。臓物を引っ張り出すと血合いの膜に何か蠢いている。さらにナイフを当てると線虫が何匹も飛び出してくねりながら水の中に散っていく・・。思わずアマゴを取り落としてサブイボが立った手にナイフを握り締め、腰を浮かせかけてすっ転びそうになった。 「ああ、そんなムシはここらの川の魚にはいくらでもおるで。あかてんき(快晴)にミミズを食うようなアマゴはだいたいムシを持っとるで。」と兄貴に笑われた。あまごの腹の中の生きた線虫はおどり川でも見たがこんな沢山入ってたのは初めてやった。それまでウチらの川では見たこともなかったもんな。 最近は放流する稚魚に線虫が入っていて、これが居ないアマゴのほうが珍しくなってしまった。 |