えっちゅう
お川ささ川
せっかく富山まで来たんだからお川へ足を伸ばそうとクラブ員の“兄貴”は新潟境を指差す。釣り雑誌では最近特に河口での鮭釣りで有名だ。海で釣る鮭は誰でも自由に釣れるのだが、これが一旦河川を遡上すると一切釣ってはまかりならぬとなる。では何処が境界だと聞くとちゃんと川岸に線が引いてあるらしい。当然その境界線の海寄りに鮭を狙って釣り人が殺到するのがこのお川の釣りだと聞く。
ここを知ったのは未だ鮭釣り狂騒曲が聞こえてくる前で、専ら富山の大型ヤマメを狙っていた時だ。ダムの放水口から河口までの数キロに川原が広がり、いつも風の中での釣りとなった記憶がある。
ここも早朝からの目的地ではないし釣行回数も知れたもので二桁に届いたこともないし、はやつき川でくたびれた後に風の中で本流竿を振るのはしんどかった。それでももう一匹でも追加をと欲を出して振るが、ついついガサツな釣りになってスレたヤマメはそっぽを向いてしまう。この川で初めて竿を満月に絞り込んだのは見たことも無い大型のうぐいで、マルタと呼ばれるらしい。海と川と行き来しているとこのように育つのか?イワナのように底にへばりついて見をくねらせる引きで、赤い腹が見えるまではドキドキさせられマルタと判ると後は「ナントカハリスが切れずに外れてくれー」と祈るばかりであった。
欲のついでに新潟境のささ川へ残りの餌を持って覗いてみた時、河口から遡上した天然稚アユが堰堤下で群れていた。餌を付けて流すとさかんについばんで、鈎だけにしてしまうのが微笑ましかったが、こんな小さな川でも天然アユが遡上するということが非常に羨ましく思えたのが印象に残っている。
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