ひょうご いな川 |
いな川は中流域では密集する住宅地からの排水が混ざって薄ら汚れてとても釣りをするようなトコには見えなかった。それでも夏になると鮎竿を構えた釣り人が立ち込んでいて、なにをアホなと思っていたら、たまたまこの川でよく鮎釣りをするヒトに出会って話を聞くと、スポーツ紙に載るくらいに人気のある釣り場とのこと。じっくり眺めていると、こんな濁った川からアユが釣れたので目を丸くした。 アユ釣りではなかったが、スポーツ紙の記事に惹かれて渓流釣りの熱がぶりかえし、大阪で手に入れたポンコツを駆って、市内に住んでいる先輩を連れいな川上流の管理釣り場へ向かう。 その頃自分のイナカでは聞いたこともないような「ルアー・フライ専用区」なる場所を過ぎて放流釣り場に着き、入場料を払うと区画を指定された。自然の川で釣りを覚えた身にはこんな体験は初めてのことで、さてさてどんなものかと期待すると、オッサンが樽にニジマスを入れて一輪車で運んできてドバドバっとその区画へ放り込んだ。釣堀そのものに興醒めしたが、ここらではしょうがないものと竿が曲がる感触だけを楽しむ。流れにつけたビク一杯と先輩の大物を、それでも土産になるだろうと持ち帰り先輩の母上に「料理してもらえませんかねー」と頼み込んだ。 知らないってのは罪の無いもので、母上は調理場で養殖ニジマスの悪臭と格闘されたらしい。「さあ、焼いたから食べなさい。もっとおかわりして食べなさい」と出されたが、一匹箸をつけたらもうあとがいけません。濃い味付けをしてもらったのにどういう具合か魚肉が臭くてとても片付けられない。先輩の母上に、もうこんな魚は持って帰ってきませんからと平謝りであった。 後日、ポンコツに乗ってさらに上流の、たぶん水系が違ったかもしれないがあまご釣りの小さな管理釣り場へも足を伸ばした。 これまたバケツから放流してもらってイクラで釣り始めたが、一通り流してしまうとあとが続かない。隣の区画で年配のオッサンが置き竿でウキつけて粘っているが、「それであまご釣れるんですか?」と問うと「撒餌があればね」とのこと。見るとコンロで湯を沸かしてカップラーメンをすすっている。モグモグしていた口を尖らせてやおらラーメンを川面に噴き出し、「これでんがな」とのたまった。ウッソー!と見ているとなんとウキが引っ張られてあまごが掛かったではないか。 なんか無性に情けなくなって腰のビクが軽くなってしまった。 |