いすず川 | いやー、恐れ多いことながら、里を流れる川で古来の様相を残しているのは東海地方ではここだけでないやろうか。ご存知の方も多い、あの、お伊勢さまの清流です。 手を清め、口をすすぐ石段から眺める清流は、参拝の方々には清清しく心洗われる流れであるのだが、釣り師は常に泳ぐ鯉とハヤに目を奪われて、不信心も甚だしいのであります。 このような清流ならばこれはきっと何か大物が釣れるんではないかとさっそく漁区を調べてみた。当然ながらお伊勢さんの神域は釣りどころか草木を手折ることもゆるされず、いきなり犯罪者になってしまう。ところが、最近は御祓い町と呼ばれるようになった赤福餅本店界隈の下流のはずれからは禁漁ではなく、漁業権も河口の港付近からしかないらしい、ってんで鳥羽へ向かう道路の橋から下流の川原へポンコツを乗り入れて、堰堤上流でのウキ釣りを試してみた。 竿が振れるってことがわかったが、あいにく近所でエサが調達できずに釣具店に頼ることとなった。目標は、ま、こんな川なので食える魚といえばシラハエくらいかナーと店主に告げると、おもむろに「じゃ、コレ」って差し出してきたのがパックに入った“サシ”。 ものの本を齧って知識はあったが、ハエの“ウジ”を釣りえさに使うのは生まれて初めてなんで、冷や汗隠しながら代金を払い古びたハエ竿と共にトランクに放り込んだ。 自分から誘ったのだが、知人や先輩に笑われながら竿を振るとちょこちょこウキが沈んでシラハエの12〜15cmくらのが上がってくる。しかし1m以上も深い堰堤上流で底が見通せるくらい澄んでいる綺麗な水だというのに、つれてくるシラハエには黒いポツポツがついて病気模様や。6〜7匹バケツに入れ、1匹は25cmくらいのウグイを釣り上げて納竿。 本当なら上流から流れてきた鯉が釣れても良さそうなもんだが、(バチアタリな・・)昼間のウキ釣りなんでそうもいかずに、とりあえず獲物はトランクに放り込んでアパートへ持って帰った。 「喰うから持って帰ったんや」という宣言のてまえ料理せぬわけにはいかず。フライパンのうえでブツブツの残ったシラハエに火を通して醤油をぶっ掛けてみたが、とてもとても・・・、酒の肴にもなりませんでした。 数日後エサが残ってたのを思い出して引きずり出すと、見事に“サシ”が羽化してパックの中は“ギンバエブンブン!”の状態に。両手のサブイボと共に速攻焼却炉行きとなりました。 もっと河口のほうでは海の魚の“ヒイラギ”という小魚が釣れるらしい。先輩方は大漁に釣ってきてコンロで炙って酒の肴にしてみえた。 オレは渓流釣りしか知らなかったからナー・ |