みやこじまおお川 こんな川に名前があったんやろうかと気にもとめなかった。ここへ初めて連れて行ってくれたのは大阪の先輩。お宅へお邪魔したちょうどその夜に先輩の父上がフナ釣りをしているとのことで、挨拶がてら釣りの様子を見に行った。
市街地から堤防道路と小さな公園をはさんだむこうにコンクリート護岸の釣り座があって、クルマのバッテリーにヘッドライトを取り付けた特製の照明が照らす川面に細いウキが浮かんでいる。橋を渡るクルマの騒音や川向こうのネオンの輝きの中で、静謐なフナ釣りをしている人が一人や二人ではなかったのにびっくり。皆其々に照明を用意して、決して電気ウキではなく、まっとうに昼間用の細いヘラウキや。
「ちょっとここに座ってやってみなさい」との言葉に、初めてのヘラブナ釣りが夜のネオンの中という稀有の体験であった。
イモ練りは秘伝のレシピなそうで、竿捌きはなんとかなるものの、ウキを見て判断する“エサのバラケ”と“アタリ”がわかるようになるまでが大変、しかもヘッドライトの照明の中央にキャストしないとウキすらどこへ行ったかわからない。同じポイントに正確にキャストして魚を散らせないことが肝要と教えられる。後日イナカでの鯉釣りに大変役立つこととなった。
さっぱりアタリがわからないので竿を父上に戻すと、「ホラキタ!」と合わせて、良型と言われるヘラを取り込む。何度か取り込む中にチヌの仔がおり、海と繋がってるからたまに釣れるんよと聞かされてまたまた稀有の体験となった。
「この公園のすぐ上流のほうで殺人事件があったってTVでやってたけど、ちょうどその時間にワタシここで釣ってましてん、全然気がつきませんねん、ハハハ・・・」と父上がさらりとおっしゃったのには「ハハハ・・・」との相槌しかうてず、さすが大阪というかやっぱり大阪というか、とんでもないトコでした。
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