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もくずがに 川で蟹と言えば沢ガニしか知らなかった。井水にも居たが裏山の沢には一杯いた。当時は山も伐採で荒れてなくてかなりの水量があったように思う、水道水源として殆ど鉄管の中へ入るようになってからはコンクリートの溝だけになってしまったが。
ありた川へアユ釣りに通っていた頃、開けた瀬の中心を泳いでいたオトリアユが急に止まった。イカリ鈎が引っかかったのだろうと少し竿を立てると何か軽く引かれる。野アユが掛かって直ぐに石の下へ潜られるとこんな引きになったかナーと竿を反対側へ倒して引いてみても出てこないが、緩めるとまた少し引かれる。これはどういうことやとさらにカミ手シモ手へと竿をあおっていたらズボッという感じでオトリに何やらぶら下がって飛んできた。慌ててタモで受けるとこれがカニ!
しっかりとイカリを挟んでタモの中で仕掛けをぐちゃぐちゃにしてまいよった。呆れて仕掛けを切って逃がしてやると泳ぐように流れに消えていった。
帰りにオトリ店に寄ってカニのことを話すとそれがモクズガニやと教えてもらった。食用の珍味なのでオトリの水槽の横にカゴを沈め、サバの頭なぞを餌にしてやって飼っているのだと。
海と川が繋がっていればこそ生息してるんやと店主は川を自慢して言った。