きそふくしま
くろ川お川
テンカラに目覚めたのは日新ロッドの初梅というハエ竿に出会ってからだ。4.2mという軽い竿にテンカラ仕掛けをつけて釣りクラブ根拠地の喫茶店のタケちゃんが郡上八幡市街地の歯科医院の下の小駄良川で20cm級のアマゴを釣りあげるのを見て、是非にと釣具店で注文して5.3mを手に入れた。
元々シラハエを釣るために開発された竿なので、片手で扱って持ち重りはしないし、そこそこのサイズの魚までは対応できる反発力もある。何よりも値段が手ごろなので「餌釣り仕掛けも使えるナ・・」と手段をえらばぬ管理人は合わせてテンカララインも購入した。ヨツアミ印の海釣りラインはテーパーなぞかかっていないが水切りと耐久性、編み糸のためよじれに強くて岐阜市在住の某テンカラ名人もお薦めだった。さすがに耐久性はカーボンテンカラ竿には劣り、以後3本同ブランドを振り折って現在に至る。
毛鉤釣りの知人も増え、県外遠征とうことで連れて行ってもらったのが長野県の川。一泊した先が木曽福島くろ川のほとりで、懐かしい囲炉裏ばたで“七笑”という愉快な日本酒を痛飲した。晩飯前にはもちろんヤドの前のくろ川でテンカラを振ったが、放流したてのチビアマゴばかりで同行者も、合流した東京からの毛鉤師たちも成果を上げられずの酒盛りであった。
翌朝向かったのが上松町から御岳の麓へ分け入るお川である。テーブルのような岩盤に降り立ち、めいめい自分のスタイルで振り始めるが、二日酔いの朝ともなれば夜明けからとはいかず、既に高く昇った陽射しのなかで苦戦を強いられることとなる。
それでも深い流れ込みの下から毛鉤のサイズを落として引きずり出した1匹の木曾アマゴは価値ある美しさやった。
岩の上に魚を横たえコンロでコーヒーを沸かし始めると監視員のご登場となり、「まあまあ、コーヒーでも飲んで話をして下さいよ」などと色々質問を投げかけているうち、とうとう遊漁証をチェックせずに上流へ行ってしまった。今でも酒が入ると思い出す笑い話である。
それから10年以上後にスケベ心を出し一人でお川を訪れたが、イワナの尻尾に毛鉤を弾かれただけでボウズという散々な目にあった。赤沢自然休養林というよく保全された山々から流れ出す水は水深を感じさせないほど澄明であった。
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