くもづ川 イナカから這い出して初めて寮生活を送ろうとしたとき、同じ教授のゼミで遭った友人が、これまたイナカの出身で、そういうわけもあって一度遊びに行った。道すがらにクルマの窓から見えた渓流に目をとめて、聞けばアマゴが釣れるらしい。後日バイトで貯めた小ガネでクーラーBOXを求め、実家から持ってきた古い子供の頃のハエ釣り竿とともに早朝から国道脇の川原へずり降りて、昔ながらの仕掛けにミミズをつけてみた。
魚さえ居れば絶対釣れるという淵に陣取り、岩陰から4mの竿をおろすと、合せをくれるまでもなく竿先をひったくられてあっというまに0.4号のハリスが飛ばされる。道糸から通しの0.6号に交換して再度流すが今度はアタリが渋い。陽射しが遅い渓谷で執拗に粘るとやはり先ほどの引きが来た。ところが、4mの短竿では耐えることのできないような走りにあって、あえ無くハリを取られた。その後二度とあたることなく、対岸をヘズって上流を目指したら竿一杯ほど滑落し尻を強打、あやうくドボンとなるところで意気消沈し帰路につく。
後日再戦のところ20cmクラスの放流モノが少々の貧果に終わっただけに、あまり釣り人が多くなかった頃のアノ渓谷にはヒレピンに回復した越年アマゴが残っていたんやろな。
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