よしの川 | 給料がもらえるようになり、4WDを手に入れてからは俄然と休日が待ち遠しくなり、進んで先輩に夜勤を代わってもらって食費を浮かし、まずは奈良県はよしの川川上地区へあまご釣りとなった。 大阪から深夜の高野街道を下り紀見峠のトンネルを抜けるとよしの川沿いに川上村へと向かう。国道から離れてさらにトンネルをぬけるとそこが釣り場で、稚魚&成魚放流の天然河川だった。日釣り券を求めて川原へ降りると今まで経験したことの無い太い流れが澄み渡って、流れの中に無数にあまごが泳ぐのがみえる。管理釣り場ばかり渡り歩いた大阪近郊では長竿で渓流をなどとは考えたこともなく、4.2mのハエ竿では情けないことに魚まで届かない。それではと橋を渡って対岸から岩場へ降りると今度は岩から水面までが高くて道糸と竿がまっすぐになるくらいに伸ばしてやっとイクラが水中に沈む。底まで見通せるような澄んだ淵にまっ黒に群れているのは全部あまご!綺麗な魚体が見えるが届かないのが口惜しくて、道糸だけ伸ばした仕掛けを作って挑むがようやっと二桁ほど釣り上げて帰りの時間となった。 次に訪れた時はオリムピック社というメーカーの新しいカーボン製アユ竿を手に入れてから、今度は友釣りの一日で、アユの日釣り券を買ってから昼メシに“柿の葉寿司”も求めた。アマゴ釣りに来たときに川相はだいたいのみ込んでいたので、底石が見えて野アユのついている瀬を決めてからオトリを買って岩へ上る。8.1mのアユ竿は今でも手元に残してあるが、その当時としては高価で非常に調子の良い竿だった。野アユの型は小ぶりやったが20匹以上と覚えている。満足して川をあとにした。 岩の上で竿を出したまま柿の葉寿司を広げると、静かな深い谷底に流れの音だけが響いて大阪の下町で体の周りにまとわりついた汚い空気が吹きさらわれるような風が吹いた。 |