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あかだす これまた今となっては希少種の“あかざ”のことや。ちちこ釣り、ごとち釣りで“穴を間違えたり、短竿を穴へ差し込みっぱなしにするとこいつがすっかり鈎まで飲み込んで、しかもヒレに毒針があるんで鈎をとられて泣きそうなはめになった。そんで、いつも石に叩きつけて殺した後に足で踏んでから糸を引っ張り、硬いあかだすの口を壊して鈎を回収していた。子供心には鈎のために情け容赦なく潰した記憶がある。川で見かけるとこれも非常に愛しい気持ちになるさかなのひとつやな。
穴のフチへそっとさしこんだちちこ竿の先の“がいむし”(ガヤ虫とする)がくねくねとするのを、じっと息を殺して見つめていると、とんでもない方向からこいつがまたくねくねとやってきて、あっあっと見る間にガヤ虫を飲み込んでしまう。「あの穴はあかだすがおるで・・・」と記憶に留めて次からは失敗の無いようにと学習していった。
今でもその生態が良くわからないらしいが、カジカのように石の下で抱卵していたのではないやろか。

後年釣友のFFマン氏と氏のイトコの某有名イラストレーター氏と飛騨川支流へ夏のアマゴ釣りに出かけたとき、イラストレータ氏の友人で日本自然保護協会の職員のSさんが一緒だった。帰りがけにSさんがあかだすを見つけて帽子で掬って「アカザですよ、珍しい!」と記念撮影を行った。これまた大事にしたい渓なので名前は伏せておきます。