ごとち 郡上八幡では“ちちこ”のことを“かぶ”と言い、“ごとち”のことを“ちちこ”と言うらしい。大人になって八幡の釣り人と話していて、初めて違うことが解った。“かわよしのぼり”というのが本名だそうな。“ちちこ”釣りの竿で流れのゆるい浅瀬の石の下を狙うとチョロッ、チョロッと吸盤状のヒレを使って出てきてはガヤ虫(ここらでは“がいむし”、郡上通称のガヤ虫が一般的)のエサを齧っていく。黒くて大きなヤツと赤いヤツがよく目立った。ものの本によるとどうやらオスとメスらしい、これまた澄んだ水のなかを覗き込みながらちちこ竿を動かす無上の楽しみがあった。流れが緩過ぎるとくそんぼが釣れたが、大川(おおかわ=本流。井水や用水に対してこう呼ぶ)ではくそんぼも非常におおきなヤツが出た。石と石の間が綺麗に掃除されている“穴”がちちこやごとちの棲家になっていたので、子供ながらにその見極めが釣果を左右すると学習したナー。
戻る