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くそんぼ 普通は“あぶらはや”という。このへんでは“くそんぼ”が通称。
裏の水神様から湧き出ていた井水(いみず)のコンクリ岸にはいつくばって、“ちちこ”釣り用の竹の枝の先に、やっぱりこれも“ちちこ”釣り用の釣鈎を付けてそっと狙った。ミミズかがいむし(ガヤ虫)をつけてやればだいたい子供でも釣れるんやが、魚が小さいものだからエサばっかり盗られて熱くなったのが病気の始まりだろうとつくづく思う。取っ手のついた手提げカンに入れて持って帰っても、喰えるわけでないし、眺めているうちに次々と死んでいくので「早う捨てて来い」と家人に言われて仕方なく用水に流してやった。今では鮎より貴重な種となり、そのへんの谷や用水でみかけるとしみじみと眺めてしまう。

県外まで釣行するようになって、初めて長野県の山梨境まで釣友に連れられて足を伸ばした。こんなところでヤマメが釣れるんかいなという、エプソン社の工場の真下で、でっかい排水管がつきだしている小川に先行者がいる。見るとイクラを口に含んで川面に噴き出して撒餌にしてるオバサンが一人。早速魚がつれてビクに放り込んだのがなんとくそんぼ!「食べるとおいしいのヨ」なぞとベテランらしい口ぶりに釣友共々愕然となったナア。