本当の幸せとは・・・働く幸せ

 先日のテレビ朝日の報道ステーションで「 働くしあわせ」をテーマに日本理化学工業という会社が紹介されていた。

 日本理化学工業はダストレスチョークを生産、販売しており、国内で最大のシェアをもっている会社だ。このチョークはホタテ貝や牡蠣の殻が原料で、粉が飛ばないチョークとして知られている。
 実はこの会社は、障がい者雇用を積極的に行い、従業員の五十%以上が重度知的障がい者なのだ。

この会社には働く幸せの像がある。そこに書いてある言葉
人間にとって必要なものは、
人に愛されること
人にほめられること
人の役に立つこと
人から必要とされること
 こういう理念を持ち、障がい者を雇用する土壌を作り、それを継続させ、働いている人たちが満足できる環境を作っている。簡単に書いたけれど、経営者としては簡単に決断できることではなかったと思う。

 社長の大山さんはこう語っていた。
 きっかけは五十年ほど前、生徒の就職のために何度も訪ねてくる養護学校の先生だった。断ると、一度だけでも会社で働く経験をさせてほしい。この子たちは、施設に入れば一生仕事をすることなく、この世を去ることになる。だめならすぐ連れ戻しますからと言う。
 ためしに働いてもらった。やっぱりやめてもらおうと思っていたら、一緒に働いていた従業員の方たちが、できないところはみんなでカバーするからやめさせないでくれと言ったという。十五歳の二人の女の子が、休み時間にも一生懸命に働いている姿を見て心を打たれたのだ。
 その会社では、障がい者のためにちょっとした工夫をしている。時間を砂時計で計るとか、作業の順番を示すための工夫とか、それは周りにいる従業員の方が障がい者の方の立場に立って考え出したものという。従来の作業方法を彼らに教えるのではなく、彼らの能力に合わせて作業を改善する。そのちょっとした工夫のおかげで作業効率は変わらなくなる。そして、褒められる。もちろん工夫をした人も役に立ったと認められる。
 そして、経営が苦しくなった時、当時営業を担当していた工場長が牡蠣の殻でチョークを作ることを思いついた。それも従業員みんなのために何とかしなければという思いからだったという。人に必要とされていることは思わぬアイディアを生み出す。

 その一番最初に勤めたもう六〇歳に近い方が、素敵な笑顔で、お母さんに頑張って働いていると話したらほめられたと嬉しそうに語られていた。愛に包まれている誇りにあふれた笑顔であった。

 一方、最近問題になっている「 派遣切り」のこと。
 派遣先の会社が派遣会社に労働者の賃金として支払うお金を「 物件費」という。まさに派遣労働者は「 もの」扱い。それがこんな言葉で当たり前に行われていることが事態の深刻さを表している。「 もの」だから簡単に解雇できるのだろう。
 ある社長が「 断腸の思いでリストラすることをご理解願いたい。」と頭を下げていたのを見ると、これも都合の良い甘えだなあと思わざるをえない。

 「 物件費」のことを教えてくれた青年ユニオンの方が、真の貧困は「 人間性の貧困」であり、本当の豊かさは人間らしい生活や豊かな人間関係にあるといわれていた。
 「 ワーキングプア」といわれているけど、本当に貧困なのは人間性が貧困であるリストラをする経営者達ではないだろうか。
 そう考えると、「 貧困」の問題は、私たちの「 人間性の貧困」の問題なのだ。


 先日、この大山さんの出版された「 働く幸せ 仕事でいちばん大切なこと=@ 大山 泰弘 (著)」を読みました。最初にシュリハンドクのことが書かれていました。これについてはずっと前から書こうと思っていたことでした。新しく知ったことも多く、まだまだやらなければならないことがあると書かれていました。一読をお勧めします。

     二〇〇九、三 
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