おふくろの味(6)  「山菜の煮しめ」

 限りなく広がる山野に春の息吹(いぶき)、山菜採りのシーズンの到来。一家の台所を(あず)かるおふくろの脳裡には今年の山菜採集の(こよみ)が既に組み込まれている。年間通して所要量も織り込み済み、いでたちもよろしく次から次へと山へ(おもむ)き所を変え品を変えては採集に余念がない。
タニフサイと身欠き鰊の煮物  家族の数や他所への愛想(よそ  あいそ)も考えての胸の中、それこそ体力の限りを尽くして幸を探し求める。当座の食膳にのせる物はそれなりの量で、直ぐに煮付けられるが、大半は年間の保存食として次の作業が始まる。

◎塩漬け
 ・うど・(ふき)・わらび・谷ふさい・くぐみ・とうきちろう等
 ※塩大量と重石を重ねて桶につけ込む。蕗は茹(ふき ゆ)でて皮をむき流れ水に浸しておき、
  水を切ってから、塩と米糠(こめぬか)で漬ける。

◎乾燥
 ・ぜんまい・わらび・くぐみ
 ※さっと茹でて、天日(てんぴ)でとことん乾かす。

◎瓶詰め
 ・すす竹の子(茹でて表皮を取り去る)
 ※一度沸騰させた濃い塩水を冷やしておき、一升瓶(いっしょうびん)・広口瓶に漬けて密封する。

 季節の野菜の品薄になった初夏に始まり、折々におふくろが惣菜の思案の中に浮かび上がって来るのが保存した山菜の煮しめである。
 まず
@塩漬けにしてあった山菜の一品を取り出して、水に(ひた)して、十分塩出しし、あく抜き。
A乾燥したわらび・ぜんまいは、水・湯に浸して戻す。
Bだしは昆布・椎茸(しいたけ)・にぼし・身欠き鰊などを用いる。
C大きな鍋で材料とだし汁をひたひたにして強火でふさふさと煮る。
D“美味い・まずいも塩加減”とやら、味付けは薄目に付け、煮込んだだし汁に(ひた)し所要量だけずつ(どんぶり)に盛って家族つついて食す。

・おふくろの山菜漬け・ひね漬け・地味噌の収納庫(住宅の北西部がよろし)

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