あじめ
どじょう
これはといって変わった魚が住んでいるわけではないウラの大川やが、はざこを別とすると有名なのはこいつくらいなもんか。
飛騨から奥美濃の清流に生息するどじょうである。ここらでは単に“あじめ”と呼んでいる。物の本によると清流に暮らすどじょうの類というのはとても珍しいものらしい、それでも昔から捕まえては食卓に上っていたので「ああ、そんなものなのかなー」という程度の認識しかなかった。
アユ釣りも盛期を迎えて渇水気味の大川へあじめとごとちを狙って自作の小さなタモと“ヒゴ”を持って行く。近くの堰堤の水量も減って、水が落ち込む直下のコンクリート棚には上ってくるあじめやごとちには隠れるところが無い。そこでココへ子供の頭くらいの川原の石をごろごろと置いておくと流れに影が出来てごとちやあじめがその周りに隠れるようになる。20mほどの間に置いた石をチャっと起こしてタモを差出し、足で魚を追うと1〜2匹のごとちや稀にあじめを掬うことができる。つぎつぎと石を動かして掬った後しばらくその場所を休めて、堰堤のコンクリ下のはざこを見たりして遊んでおく。するとまた石の下にごとちが入ってくるので端の方からチャっと起こし始める。日焼けするくらい遊ぶと石をいれて水に半分沈めたヒゴの中にざわざわとごとちやあじめが溜まることとなる。これを持って帰ると珍味の甘露煮となるわけで、家中で喜んで箸を伸ばしたものだった。
あじめ漁は飛騨にもあるらしいが、ここらでは鑑札制となっていて、伏流水が湧き出す川の穴へ産卵に集まるあじめを“あじめ落とし”の仕掛けで専門に捕まえる。ながら川でよく行われていた“上り落ち漁”に近いものだ。捕ったあじめは高値で料理屋などへ卸されて、一時は片手に一杯ン千円という値段だったらしい。もちろん今でも生息しているにはいるが見かけることも少なく、第一に産卵に集まる魚を一網打尽にしていたのでは、いくら下水道が普及して昔の清流を取り戻しつつあっても増えるはずもないことは子供でも理解できる。
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